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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)565号 判決 1954年1月19日

主文

原判決を破棄する。

本件を仙台高等裁判所に差戻す。

理由

上告代理人石川金次郎、同伊藤俊郎の上告理由は添付の別紙記載のとおりである。

自作農創設特別措置法による農地買収処分の取消を求める訴訟の判決で買収令書に記載された農地の一部分について買収処分を取り消す場合は、判決主文をもつて取り消す区域を明確にしなければならない。しかるに原判決主文は「被控訴人が昭和二十二年八月三十一日附岩手ろ第九一二号令書を以て、岩手県二戸郡一戸大町字一戸字大沢八十六番畑六反三畝十五歩のうち、控訴人が野里善吉から返還を受けた約七畝歩、根反市太郎から返還を受けた約一反一歩、駒木某から返還を受けた約三畝歩、以上合計約二反歩(控訴人が自作してきた分)の買収処分を取消す(以下略)」と記載しあり、右八六番のうち買収処分を取り消す面積はほぼ明かであるが、いかなる区域について取り消したのか明白でない。被上告人が小作人から返還を受け自作してきた部分は、或は、被上告人と小作人との間では事実上明白であるかも知れないけれども、判決書自体では明でない、判決をもつて買収処分を取り消し、その判決が確定するときは、その取り消した部分については、買収令書の交付によつて一応生じた所有権移転の効力が消滅するのであるから、右の部分を明確に判示することを必要とする。前述のとおり区域を明確にしないで買収処分を一部取り消した原判決は違法であるといわなければならないのであつて、本件上告は理由があり、原判決は破棄を免れない。よつて右区域を明かならしめるため、民訴四〇七条一項により本件を原裁判所に差戻すこととし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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